Vol.29 ~ 下水をきれいにする生物たち ~ (2016.04.15)

2020年6月11日木曜日

下水について

現代の情報社会に生きる私たちにとっては、いかに大量に存在する情報をどのように分析かつ活かせるかが勝敗のカギを握るのではないかと考えられます。

経験的に得られたバラツキのあるデータから、応用数学の手法を用いて数値上の性質や規則性あるいは不規則性を見いだすための「統計学」がありますが、この中でも主なものとして、収集したデータの要約統計量(平均、分散など)を計算して分布を調べて、データの示す傾向や性質を知る「記述統計」と、データからその元となっている諸性質を確率論的に推測する「推計統計」があります。

あまり聞き慣れないのですが、その他に「ベイズ統計学」というものがあります。
ベイズ統計学とは、ベイズの定理を基礎とした統計学であり、ベイズの定理がわかれば、ベイズ統計学の基礎がわかるそうです。

ベイズの定理を学ぶにあたっては、データを手に入れる前に想定していた確率である、「事前確立」と、データを用いて事前確率を修正した結果の確率である、「事後確立」を覚えることが必要らしいです。

一例をあげると、メンバーの男性が10人、女性が10人のグループがあります。
部屋の中には、メンバーが一人だけ入室しています。
その人は、女性でしょうか、男性でしょうか。

何も情報がなければ、男性である確率も、女性である確率も「50%」だと推測するところだと思います。この「50%」が事前確率です。

次に、データが手に入ったことによる、事前確率の変化を見ていきます。
部屋の前に赤いカバンが置いてありました。男性10人のうち、1人は赤いカバンを持っています。女性10人のうち、3人は赤いカバンを持っています。

女性のほうが、赤いカバンを持っている確率が高いです。
グループのメンバー全員で見ると、20人中4人、すなわち20%の人が赤いカバンを持っていることになります。

一方、女性だけでみると、10人中3人、すなわち30%の人が赤いカバンを持っています。30÷20=1.5ですね。すなわち、「女性はクラス平均の1.5倍、赤いカバンを持ちやすい」ことになります。

そして、部屋の前には赤いカバンが置かれている。
ということで「部屋の中にいる人は、1.5倍、女性でありやすい」と推察されます。
部屋の中にいる人が女性である確率は、事前確率を1.5倍した50×1.5=75%となります。

事前確率が、「赤いカバンが置いてあるというデータ」によって1.5倍されました。
変化した結果の75%という確率を、事後確率といいます。

頭の中が混乱してきたので、興味がある方はさらに学習していただきたいと思います。


下水がきれいになるしくみ


いままで、下水道のお話はいくつかさせていただきましたが、汚れた下水はどこへ行き、どうやってキレイにされるのかというお話はまだでしたよね。
知っている方も多いと思いますが、いろいろな小さな生き物たちが、汚れた水をキレイにしてくれていることをご存知でしたか?

私たちが使って汚れた水は、下水道を通って、下水処理場へ流れていきます。
下水処理場では、次のように浄化されていきます。

1.沈砂池

処理場に運ばれた下水は、まず、沈砂池と呼ばれる池に入り、 下水の中に含まれている大きなゴミや砂は、ここで取り除かれます。

2.最初沈殿池

沈砂池で大きなゴミや砂を取り除かれた下水は最初沈殿池に入り、沈砂池で沈まなかった小さなゴミや砂を取り除きます。

3.反応槽

最初沈殿池を通った下水は、反応槽に入り、バクテリアや原生動物のような微生物の集まり(活性汚泥)を下水に混ぜて、空気を吹き込みます。活性汚泥は、下水の汚れを食べることによって増殖し、水はきれいになっていきます。

4.最終沈殿池

反応タンクで増殖した活性汚泥は、この最終沈殿池でキレイになった水との分離が行われます。

5.高度処理

「赤潮」の原因になる、窒素やりんなどの栄養塩類を取り除くために、標準方とは別に高度処理法を導入している処理場もあります。

6.消毒施設

最後に、最終沈殿池の上澄み水を消毒してから、きれいになった下水処理水は、湖・河川や海に放流されます。なお、消毒法として「塩素」・「紫外線」・「オゾン」による方法があります。


「水を綺麗にする」は、「水と固体を分離する」ことでもあり、その結果、汚泥発生汚泥脱水して含水率の少ない処理しやすい脱水ケーキを作って処分することになります。

最初沈殿池や最終沈殿地で沈んだ汚泥は、肥料や地力増進資材として農作物の生産力の維に役立てられるか、セメント原料、コンクリート、骨材、ブロック、レンガ等の原料としても利用されています。


下水中の汚れを食べる、微生物たち


前述した下水処理場の反応槽では、空気を吹き込むことによって活性汚泥の中の微生物が活発になり、下水中の汚れ(有機物)を食べることによって汚れた水を、キレイにしてくれます。
では、いったいどのような微生物が汚れた水をキレイにしてくれるのでしょうか。

活性汚泥を構成する微生物は、流入してくる下水の汚れ具合や質、温度などにより種類や数に違いがあるようです。
活性汚泥中に生息する微生物の種類は約200種と言われ、反応槽でよく出現するのは50種程度だとのことです。

大きく分けると、鞭毛虫類、肉質虫類、繊毛虫類に分けられます。

1.鞭毛虫類

1本または多数の鞭毛があり、葉緑体を持つもの・持たない種類がいます。
基本的には無性生殖を行いますが、中には有性生殖するものもいます。
代表的なものにとして、ペラネマ,エントシホン,ポテリオデンドロン等がいます。

2.肉質虫類

葉状、糸状、網状の仮足があるものは、流動によって移動し、球状のものはプランクトンのような浮遊生活を送ります。
代表的なものとして、アメーバ,バルカンフィア,アルケラ,ピキシディクラ,ケントロピキシス,トリネマ,アクチノフィリス等がいます。

3.繊毛虫類

2種類の核(大核と小核)を有し、単性単為生殖(本来は受精等によって新しい個体をつくる生殖細胞が、受精を経ることなく新しい個体を形成すること)を行いますが、出芽(親の体のある部分から、子の体ができて、それが次第に大きくなって独立する)することもあります。
代表的なものとして、トラケロフィルム,コレプス,プロロドン,リトノツス,アンフィレプツス,キロドネラ等がいます。

その他に、緩歩動物に属する「クマムシ」(お笑いコンビではありません)がおり、体長は0.2mm~1mmと他の微生物と比較すると大きめです。


微生物が汚れた水をキレイにするプロセスと、注意しなければならないこと


汚れた水をキレイにするのは微生物の仕事ですが、微生物はデリケートな生き物ですから、汚水であればどんなものでも処理できるわけではありません。
油を流してしまうと、微生物が酸素を供給できなくなってしまい、動きが鈍くなったり、死んでしまう場合があるのです。

一般家庭から流されることは無いと思いますが、工場などから毒性ケミカルが流出してしまうようなことがあると、油と同様に微生物にダメージを与えてしまうでしょう。

微生物が下水中の汚れを食べて、水をキレイにするプロセスを次に示します。

1.汚れた水に微生物がたくさん含まれる活性汚泥を混ぜ、空気を吹き込みます。

2.微生物が汚れを食べて増殖します。

3.微生物が増殖することによって、大きなかたまりになります。

4.吹き込む空気を止めてることによって、微生物は沈み始めて上澄みの水は、
  キレイになります。


下水道を守ることは、私たちの役目でもあります。





編集後記


今回の原稿作成で下水の中で生息している生物を調べるにあたり、ネット検索で「下水 生物」を行ったところ、いろいろな情報に出会うことができました。
下水道の中では、ゴキブリやネズミは珍しくないのですが、米国ではペットとして飼っていたワニが逃げ出し、下水道の中で生息していた話などがあったのです。


最後までお読み頂き有難うございました



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